| 我がままな恋の終わらせ方 |
曖昧な関係を喜んでいたのは、嘘をまとった本心。 これでも十分だと満足を強制したのは、この関係が私の独りよがりのものでしかないと教えられるのが怖かっただけ。彼にその気はないという事実を知らされたくなかっただけ。 けれど欲張りな私は、結局嘘をつくということすら我慢できなくなってしまって。 嘘と本音の狭間で苦しむ、今日も繰り返されるこの時に。視線の先にはあなたがいた。 それは体育祭のお昼休みが終わり、まもなく午後の部を開始するという生徒会アナウンスに男子たちが躍起だっている時だった。 私は今年で3回目になるタイムスケジュールに大して興奮するわけでもなく、まるで昨日も同じことをしていたみたいに淡々と時間を過ごしていた。お昼休みの時だって、騎馬戦の時の男子格好よかったよね、私たちのブロックあんまりいい順位じゃないよ、そういえば3組のあの2人がスプーンリレーの時にね、なんて。内容こそは体育祭に合ったものだったけれど、耳にする声はいつもと同じメンバー。別に新鮮味を求めているわけではないから、私はそれで一向に構わなかったしむしろいつも通りに最後の体育祭を楽しめることが逆に嬉しかったのだけれど。 欲張りになってしまった私は、今日という日にもいつのまにか彼の姿を探してしまう。 お昼ごはんを食べに行っていた教室から戻ってきて、午前中と同じように昇降口で運動靴に履き替えて。梅雨なのに綺麗に晴れ渡った空を見上げて、暑いな、日焼け止めクリームもっと塗ればよかったな、なんて、いつも通りのことを考えていたのに。 校長先生の大好きな朝礼台横。いくつも並べられた白いテント、その中。 その中に彼がいるのを、図々しくも私は発見してしまった。 (……生徒会審議があるって誰かが言ってたっけ。採点中なのかな) 開会式の時までは心地よかったのに、梅雨を忘れた太陽に照らされ続けたせいかさすがに空気は生温い。たとえ風が流れたとしても心から喜ぶことのできない中途半端な爽やかさしか感じない。 まさにそんな午後。それなのに、私は彼の姿を見つけて足を止めてしまった。日陰に行こうとも、友達の背中を追いかけようともせず。 クラスが違うから普段はあまり見ることができない、私と同じ学年色の体操服。その背中には端正な字でクラス名と名前が書かれたゼッケン。こんな時に彼が同学年であるということを改めして認識している今の私が感じているのは、小さな安堵感だ。 同じ学校の3年生。これだって十分な共通点だと気づいた時、私は小さいけれどそれでもとても意味のある発見をさせてもらっていた。そして。 「手塚くん」 私は何の躊躇もなくその名を呼び、そして何の違和感もなく真正面から視線を受ける。 不自然さはない。あるとしたら、そして傲慢でなければそれはきっと馴染みの色。 「。どうした?」 「特には。今声かけてまずかった?」 「いや、いい。平気だ。粗方の仕事は終わっているから」 なにか理由がなければ話すことができない、そう感じていたのは遠い昔のよう。 ただ手塚くんは律儀すぎる性格ゆえに、今から始まろうとしているこの会話の起因を尋ねはするけれど、それだって普段の友達との会話と同じで、とりたてて意味のないもの。額面どおりにしか言葉を受け取れなかった頃、要するに何も接点を持たないくせに私が手塚くんを周りが称する雰囲気そのままに思っていた頃とは随分変わったと、ちょっとした嬉しさを含みながら私はそう感じていた。 私はテントの中にいる手塚くんに声をかけ、そして手塚くんは振り返りテントから出る。 眩しい初夏の太陽が、彼の細くて綺麗な髪をとても丁寧に照らしてくれていた。 「1組、調子いいみたいだね。さっきのブロック演技の評判もよかったし」 「そうみたいだな。つい今しがた不二と菊丸がここに来ていたぐらいだ」 「不二くんと菊丸くん? どうして」 「6組のブロックはあまりいい順位じゃないからな。告げ口をしにきた、校長先生に」 「……それって」 「俺が点数を下げているに違いないから見張りをつけてくれ、だそうだ」 「あはは! 真顔で言わないで!」 「笑うところじゃないと思うぞ、」 そう言うと手塚くんはお得意のしかめ面をしてみせたけれど、もちろん私は笑いを止めることができない。笑えてしまうのはそういう勝手な因縁を堂々と校長先生に宣告するあの2人組のせいなのだろうけれど、今の私はそんなふうにからかいの騒動の中に引きずり込まれている苦労人の部長という姿がとても愛らしい。もちろんそんなことは心の中で思ってもけして言葉には出せないけれど(手塚くんを愛らしいという表現を使って説明するとなんだか怒られそうだ)。 手塚国光という名前にのしかかっているものは、とても大きくて責任のあるものばかり。 けれどそれを重いばかりのものではないようにしてくれているのは、明らかに彼の周りの人たち。その事実を私はまるで自分のことのように嬉しく思う。勝手な話だけれど。 そして私はふと笑うのを止め、改めて手塚くんを見る。 他人の幸福を願うことなんて、そんな綺麗ごとは絶対に無理だと思っていたのに。 それとも今胸に抱く想いは、本当はそんな綺麗事とは無縁の、もっと自分勝手で傲慢なものでしかないのだろうか。そんなことを思わないでもなかった。 それは、心当たりの多すぎる恋愛感情。 「は」 「え?」 「は、何の競技に参加するんだ?」 手塚くんが真正面からきちんと私を見て尋ねる。言葉の流れがスムーズだった。 「400メートルリレー。足の速い子たちは皆800かブロック対抗に回されちゃったから」 「400? 予選は午前中だったよな」 「うん。奇跡的に決勝に進んだから、午後にもう一勝負なの」 手塚くんがテントの鉄柱に掲げられたプログラム進行表をパラパラとめくる。生徒主体であるということが学校側の自負する魅力でもある体育祭は、生徒会長の手塚くんにとってすべての進行を理解し、把握しておかなければならない行事のひとつなんだろう。 けれど不謹慎な私は、進行表を見つめる手塚くんの横顔や、指先に目を奪われる。身体は大きくて薄い日焼けをしたその様子は、ものすごく彼が部活少年であることを想起させる。まだそれでも、野球部やサッカー部に比べれば肌は白いほうだったけれど。 そんなことを思いながら、気づかされるひとつの事実に私はうつむきがちに苦笑する。 私はいつになったら、この人に自分の想いを打ち明けられることができるのだろうと。 まったく関係のない頃から比べれば、こうして話をすることができるだけでも奇跡だ。ものすごい進歩だ、と最初はそう思うことができた。でもそう思うことで満足できたのは、私の心の中になんら恋愛感情がなかったからだ。親友という関係がひとつ増えることに満足できたのは、彼を単なる同級生としか見ていなかったからだ。 けれど、今はもう。思い出そうとしてもなにがきっかけだったのかすらも分からない、この自分でももてあますほどの恋愛感情が心の半分以上を占めている今となっては。 彼を単なる同級生として見ることが、いかに不可能であるか。知らされるばかり。 「手塚くん、騎馬戦出てたよね。すごかったよ」 それでも、そんな感情よりも先に私を守ろうとするのは臆病な作り物の平常心。 普通でいよう、彼にこの想いがばれないようにしよう、と、心に抱く思いとは裏腹になるべく今の状態を保つことに意識を向けるその怯える心が私を支配する。 たとえその言葉に手塚くんが視線を戻し、きちんと真正面から私を見てくれたって。 「そうか? やっている人間からすると、なにがなんなのか分からなくなるけどな」 「でも男子の競技ってやっぱり迫力が全然違うよ。皆いつのまにか真剣に応援してたし。……あ、他の競技ももちろん真剣にしてるんだけど、なんとなくね。なにかが違った」 「そうか」 手塚くんが笑う。私もつられて笑う。けれど心はどこか痛かった。 私は分かっていた。臆病になる理由が。今のままを保とうとするずる賢い考えがどこから生まれているのか、自分が嫌になるぐらいに分かっていた。 やんわりと笑みを浮かべるその顔は、今たしかに私に向けられている。遠巻きに彼を見ている子にはけして分からない自然体そのものの姿を、今日も私に見せてくれている。 けれど。この姿は、もしかしたら。 もしかしたら、同級生というカテゴリの中にいるからこそ向けられているものなのではないかと、そう思う。思っていた方が幸せだと感じる時すらある。 「手塚くん、テニス部の皆に集中攻撃されてたでしょ」 「見ていたのか?」 「目立ってたからね。面白いぐらいにテニス部メンバーがぶつかっていったから」 「俺は足の方だったんだがな」 だって都合がよすぎる。どうしてこんなにも普通に話せるのだろう。 同級生とはいえ、私たちは3年間で一度も同じクラスになったことはなくて。ただ私が生徒会長としての手塚国光を知っていただけで、他には何のつながりもなかったのに。 「もしかして、また菊丸くんたちに悪企みされた?」 「……」 「図星」 「そういう意味なら大石も被害者だぞ。棒倒しの時、桃城と越前に妨害されていたからな」 「テニス部って、そういうの好きだね」 「ひとくくりにされるのは心外だな」 「だって手塚くん、部長だし。あの皆の長だし」 「……」 それなのに、この会話は。少なくとも特定の女子と話すというようなシーンは見かけてこなかった私にとっては、とても自己満足な自惚れを抱かせる。そして思う。 手塚くんにとって、私はいったいどういう存在の同級生なんだろう。 同級生というカテゴリがあることは否定しない。それがなければ今の私たちはない。 私が気になるのは、さらにその上。この同級生という関係の、さらにその上に付け足された情報。そこに込められるこの人の想い。 けれど。 「手塚くん、ちょっと」 「どうした?」 「次のリレー決勝のことなんだけどね」 その時飛んできたのは、私よりももっと艶のある女の子らしい声。 評議委員の誰かだろう、3年生ということは分かるけれどそれ以上の情報はまったくない女子が私にチラリと視線を向けて、そして手塚くんをテントの中へと戻す。思わず心臓が固まってしまいそうになったけれど、手塚くんには何も悟られなかった。 全ての神経が過剰に反応してしまう、こんな時に他の女子の声を聞くと、私の心はどうしようもなくなる。いてもたってもいられないほどに我がままな独占欲を感じさせられる。 けれど。気になるもの以上に、怖くなるもの。 それは、でしゃばる私の欲求を彼が知ったらどうなるか。 嫌われるか。疎まれるか。これまでの関係を清算させられるか。 そんなマイナスなことを思い出したらキリがないほど、私たちの関係には不確定要素が多すぎて、そして私の考えはとても自己愛に走りすぎていて。こんなにも話せるんだから大丈夫、なんて勘違いも独りよがりも甚だしい考えを抱いている自分がいることを、否定することもできなくて。 テントの中、生徒会長としての仕事に戻った手塚くんの背中を見つめる。 大きかった背中。私より頭ひとつ分以上高いその身長。線は細いようにみえても近くで見ればやっぱり鍛えられた腕をしていて、手のひらの大きさに驚いたこともあった。頭はよくてもちろん授業中もきちんとしているけど、時々気が抜けたように人との会話で相槌しかうたなくなるとか、問題の6組コンビが話をしに1組に来た時は、邪険にしながらも結局は話にのって、私が普段友達とするような他愛ない会話をしているとか。 好きだな、と思った時にはもうすべてがその色でしか見ることができなかった。 たとえ遠い人でも。単なる同級生としか思われていなくても。 思わず都合のいい考えを抱きたくなってしまうような、なにかを期待してしまうような。そんなことが時々不意をついたように訪れて、それにおもいきり踊らされていることを、彼が知っていても知らなくても。どちらにしても。私は彼が好きでたまらなかった。 ただ。恋しいと思うのと同時に、けれど脅かされる「この先」にあるもの。 私はこの想いを捨てる勇気も告げる勇気もない自分に、いい加減辟易していた。 だからなのだろうか。その時、私はいつも以上にナーバスで、そしていつも以上に。 手塚国光という人を好きになりすぎた自分を感じていた。 「悪い、。そろそろ……」 律儀に帰ってきてくれる手塚くんを、どうしたら単なる同級生だと見ることができるのだろう。触れ合う前の、顔と名前と噂しか知らない、そんな同級生だと思うことができるのだろう。ここで無理だ、なん解答しか用意できないのは、自分に甘いだけなのだろうか。 「?」 「……あ、ごめん」 何も言葉を返さない私に手塚くんが訝り、再度声をかける。私は慌てて右手を振った。 話せる関係たというだけで満足してはずなのに、と誰かが言うのを遠くに聞きながら。曖昧な関係でもそれでも構わないと言っていた、無欲を演じようとした自分を笑う声を遠くに聞きながら。 「ごめんね、お邪魔しました。仕事頑張って」 これ以上傍にいたらなにかが狂ってしまう。そう思い、私は目を合わせないまま一歩後ずさり、そして背中を向ける。体育祭の熱気と太陽の熱とにやられたと片付けようとした。 けれど、その時。そんな時にも。 「頑張れよ、決勝」 そんな声が届いてしまうものだから、私は自分の感情を捨てられなくなる。 好きな人にそんな言葉をかけられるのは、効果的というよりもむしろ動揺を生み出すということを知っているのだろうか。恋心の整理をすることができず右往左往している私の心に、それは。 それは涙すら生み出しかねないということを、手塚くんは知っているのだろうか。 「……もちろん! 言っておくけど1組には負けないからね、点数いじらないでね」 「お前も菊丸たちと同じか……」 「ため息つかないでよ、こっちは真剣勝負なんだから」 振り返りざま、私が選択したのは「嘘にまみれた平常心」。 涙を見せないようにおもいきりの笑顔をつくってあげた。そうすればこの場を乗り切れる。 いつもどおりのでいようとした。そうすれば少なくとも彼に嫌われなくてすむ。 なのに、それなのに。そう思った私の心は甘くて。というよりもむしろ、恋する相手にはなにをどう頑張っても敵うはずがないということを、改めて私は知らされて。 「わかった。頑張れよ」 笑みを向けられては、もうどうしようもなかった。 去る用意をしていた左足が止まる。振ろうとした右手が、行き先をなくして固まる。 我がままだった。欲求というものはとどまることを知らないというのを、身をもって体験している気分だった。そして手塚くんに踊らされている気分だった、そんな女が自分であることを楽しんでいる私がいた。 私は足を止め。少しの距離をおいたところから、手塚くんの目をきちんと見て。 そして、我がままに突っ走る決意もしないまま、言葉だけを。 「決勝が終わったら、話聞いてもらえない?」 口にした。 先生たちが戻ってくる。父兄も戻ってくる。広いグラウンドの向こうには、午後の部開始を今か今かと待ち望んでいる生徒たちの姿がひしめきあっている。私のブロックカラーも、手塚くんのブロックカラーも視界の片隅に映る。 周りは体育祭。3年生の私たちにとって、最後の体育祭。 そんな空気の中で、手塚くんと私はまるで違う世界にいるように、取り残されてしまったかのように、冷静にお互いを見ていた。 「……何の話だ?」 「すぐ済むから」 「今じゃ駄目なのか?」 「私にも心の準備がいるの」 恋愛に疎いと思っていた私の想い人は、意外にもその一言ですべてを察したらしい。 風が流れて、あの艶のある髪が揺れて、その線の細さに綺麗だなとか。眼鏡の向こうにある目がいつもと変わらずまったく曇っていないな、とか。こんな時にも思う私は重症。 その時。その瞳が一瞬ぐらついて、視線をずらして。私がそのしぐさに目を奪われた時。 「……の話は聞くから」 「……うん?」 「先に俺の話を聞いてくれ」 私はその時、なにを思ったのかは分からない。 そして次の言葉を発するまでに、どれほどの時間を要したのかも分からない。 「……え? なに? 今なんて言った?」 「……いや、だから」 「……え? ご、ごめんちょっと。待って、ちょっと待って」 「待つから落ち着け」 私は知っている。彼が好んでTPOを考えずに冗談を飛ばすような人間ではないことを。 そして分かっている。私は今、曲がりなりにも嘘を捨てて本気で言葉を口にしたことを。 「……それは、どういう意味か、な……って、聞いてもいい?」 「……」 「あ、ご、ごめん! 気にしないで、いいの、私が悪……」 「俺がの言葉を聞いて受け取ったそのままの意味だ」 再び訪れる沈黙。そして私は結局何も返せなかった。ただ心に思うだけだった。 自惚れてもいいのならば、神様。 青天の霹靂という言葉は、こういう時に使うべき言葉なんでしょうか。 そしてぽつりと零された、なんとなく女に先に言わせるのも言われるのも嫌だなんて、そんな現代フェミニズム思想完璧無視でプチ亭主関白予備軍な。そんな人の言葉に、けれど私は目が点になるということしかできなかった。それ以外になにをしようにも、全ての神経は目の前の人に注がれていて完全無理だった。 私はしばらくの沈黙の後、硬直するでも涙するでもなく。 ただ力なく笑った。なにがおかしいのかも分からない、ただ神経の導くままに笑った。 後日談、手塚くんはその笑いに随分とショックを受けたそうなのですが、それはそれ。今まで悩み悩んでいた私からすれば、笑うしか方法がなかったのだ。 「ひとつ質問」 「……なんだ?」 気がふれたように笑い涙を浮かべて突拍子もない言葉を口にする私と、少し気まずそうな手塚くんと。生徒会のアナウンスも無視して、テント裏でいつもどおりの会話を続ける。 「400メートルリレー決勝、どこを応援するの?」 そんな唐突な質問に、手塚くんはしばらく悩み、そして。 「……そういうことを聞く前に、さっさとブロックに戻れ」 「あ、逃げた」 「逃げじゃない。本当のことを言っただけだ」 そんな相変わらずの解答なんて、簡単に予想できた。手塚マニアと呼ばれても否定できないぐらいに彼の一挙一動を見つづけてきた(一歩間違えばストーカー)私にとって、そんな答えは今までとまったく変わらないものなのに、それでも違うものが確実にある。 透き通る青空。今日は紫外線なんて気にしなくてもいいかもしれない。 リレーが終わったら、購買部で缶ジュースの1本でも差し入れよう。そんなことを思っても誰も咎めないかもしれない。断られる時の恐怖に怯えなくてもいいのかもしれない。 そんなことを思った時、ようやく私は強張った神経から解放されたらしく。 「……! 、ちょっと」 慌てた手塚くんに右腕を引っ張られ、つれていかれた校舎傍。 見上げた校舎は涙でぼやけて、手塚くんの顔すらまともに見れなくなっていた。 「泣くか笑うかどっちかにしろ」 「うん、分かった」 「分かっていない」 そんなお咎めの声も、今ばかりは優しい色を伴ったものにしか聞こえない。 私は相変わらず涙に邪魔された視界のまま、笑って頷いた。ぶれた視界の向こうで手塚くんは呆れた顔でため息をついた。こんな時まで綺麗な顔してないでよ、なんて突っ込もうとしたその時、晴天のグラウンドにリレー決勝出場者の集合のアナウンスがかかる。 最後の体育祭。目に映る青空も、耳に届く歓声も、掴まれた腕に伝わる温もりも。全てが優しくて、温かくて、とても綺麗なものに思えた。 |
| 04/06/29 |