| 忍足侑士くんの氷帝学園日記 01 |
「親友」という名で紹介してもいいだろう俺のツレは、笑えるほど単純だ。 すぐ笑う。すぐ怒る。すぐ走る。跳ぶ。バテる。また怒る。 激しく単純だ。誰がどう仕向けたのかと尋ねたいぐらい単純だ。天然記念物なみに単純だ、正直真っ直ぐすぎて心配だ。バカ正直な人間というものを俺は知らないわけではないが(あの部活にいたら当然そうなる)、この親友の正直さは色んな意味で危なっかしい。 「あ。やっべえ、俺教科書忘れてきた! 宿題出てんのに!」 「また……だからロッカーの中に置きっぱなしにしないでって、何回も言ってるのに」 「あーもう最低だ、お前の貸して」 「しょうがないなあ」 「そういえばお前のクラスの方が進度速かったよな。ついでに宿題写させて」 「却下」 そんな単純な親友に、つい最近彼女ができた。 見ていてどこかせわしない、そんな印象が消えない親友は今日も唐突に話を転換させる。クラスこそ違えどあの部活で共に過ごす時間の多い俺はそれに慣れきっているが、俺以上に慣れているのではないかと思える相手と今、幸せそうに付き合っている。 その様子を見ていると、こうなるのはまるで当然の成り行きであったかと思わせるほど、そんな幸せぶりで。 「これが古典なら、教科書すら貸さないんだけどなあ……」 「バカヤロー、古典なら尚更だろ。お前どれだけ俺を不幸にすれば気が済むんだ」 「不幸の原因を作っているのは岳人だからどうしようもない」 「なんだそれ!」 口と手を両方動かしながら(こういうところは微妙に器用)、親友は雑な字で問題を解いていく。理系は得意と豪語するだけあって(跡部の前ではしないあたりも微妙に器用)、そのスピードはなかなかのもの。俺は100円で買ったコーヒーの温さに心の中でため息をついてから、そっと視線をその隣りに向ける。 そこには、俺の視線なんてまるでお構いなしな女子の姿……もとい、視線と表情。 (こいつの良さを理解したやつにしかできひん目やなあ) コーヒーを喉奥に流し込む。激しくぬるい。そのぬるさにしかめ面をする、そんな俺には気づかない。 けれどシャーペンの芯がなくなったことにしかめ面をする、そんな親友の表情にはすぐ気づいて、笑いながらペンケースを差し出す。その様子を見て「甘い」と俺がちゃちゃを入れると、女子よりも先に親友の方が「うるさい」と俺を叱る。 俺に優しいのはぬるいコーヒーのみらしい。 まあそれもええやろ、と俺は無言と無表情を飾ったまま、静かに夕陽の色が変わっていく様を見つめる。 「あれ、なんだこれ。お前この計算間違ってる」 「え、嘘」 「嘘じゃねえよ。ほら、これ。代入が間違ってる」 気づけば随分と、この親友も落ち着いた表情をするようになった。 それは最初の言葉に矛盾すると、そんなことは分かっている。でもそんな性格の中で、落ち着いた表情をすることができるようになった「事実」は。だからこそ、だ。それは特記すべき内容だ。 落ち着いた部分を持ちたい、という気持ちをこいつに抱かせるようになったこの「事実」に至るまでには、とても一言では言えない色々な出来事があったけれども。けっして人には褒められるものでも、ましてや感動されるものでもない、このふたりにとっても自慢できる過去ではないのだけれども。 それでも、と。俺は冷めたコーヒーを相方に、小さくひとつ息をついて目の前のふたりを静かに見つめる。 それでも、今の空気が居心地のよいものであること。 それは俺にとってもそう感じられるほどに、微笑ましいものであること。それは、きっと、もっと。自慢に思ってよいものだと思ったし、だからこそ「過去」は褒められなくとも、その褒められない過去を真っ直ぐに突っ走ってようやくたどりついた「今」を、認めるという意味で褒めてやる人間がひとりぐらいいても構わないと思う。 「あ、やだちょっと。やめてよ岳人、字汚い!」 「はあ? お前、人が直してやってんのに『汚い』はないだろ。なあ侑士」 「お世辞にもお前の字は綺麗とは言えへんで、岳人」 「ほら」 「『ほら』じゃねえ! なんだお前ら、俺ばっかり悪者にしやがって!」 単純な親友は、落ち着く部分を手に入れたといってもやはりその基底にあるのは「単純」さ。俺ともうひとりの言葉にいちいち反応し、いちいち怒り、いちいち拗ねる。昔はそれを慰めることの半分は(強制的に)俺の役割にされていたが、今は違う。 俺以上に宥めることの上手い人間が、今は目の前にいる。 その人間との関係を、人には真似できない努力で手に入れた今の親友を、褒める人間がひとりぐらいいてもいいはずだった。そしてその褒める人間が、他でもない俺であること。それでもいいと、俺は思う。 ただ、だからこそ。岳人を優しい眼差しで見つめることのできる人を見ながら、俺は思う。 (お前ももっと大げさに嬉しそうにしてもえと思うんやけどなあ) 岳人の心情など、今更尋ね、確認するまでもない。親友である以上、様子のひとつでもうかがっていれば俺にとってそれは造作もないこと。 けれど、その相手は勝手が違う。見ていれば全てが分かる、そんな関係でも、ましてやご丁寧に全てをさらけ出してくれる人でもない。 心情を読み取ることのできないもどかしさは、ただ不毛なまでに募るばかり。 (お前だって、素直に褒められて、素直に喜んでもええんとちゃうか。なあ、) 初夏の夕暮れに思う言葉は、まだ伝えてはいなかった。 伝えてよいものか。そこまで踏み込んでもよいものか。岳人ではない俺にはまだつかみきれない距離がそこにはあって、俺は今日もただ冷めたコーヒーを飲むことでその言葉も一緒に飲み込むことしかできなかった。 「あ、忍足くん!」 そんなある日、その声はどこか嬉しそうに部活に行く前の俺の名を呼んだ。 「今から部活だよね? お願いがあって」 「お願い?」 「……これを、お願いしようかと」 そう言って、はそっと俺にタオルを差し出す。誰のやねん、とつっこむよりも前に、その申し訳なさと嬉しさとが入り混じった表情を確認すれば、答えなんてすぐに出てくる。 表情だけなら幾分か素直な部分もある、と思いながら俺は肩を竦めた。 「はいはい、またお前の彼氏の忘れ物届け係か」 からかい半分で大げさなため息をつき、それを受け取る。見上げる姿勢のは一度目を瞬かせたあと、俺の嫌味に気づいて目を細めた。 「忘れ物をする岳人が悪いと思うのは気のせい?」 「それを教育するんが彼女やと思う俺は間違うとるか?」 「間違ってないけど、多分今この瞬間では岳人の非を責めるよりも大親友の忍足くんにお願いをすることの方が生産性がいいと思うのは、間違ってますか?」 「お前、岳人の彼女にはもったいないわ」 「忍足くんの言葉は重みがあるから困るなあ、褒め言葉として受け取らせてもらいます」 俺のことはええから、とつっこむよりも前には教室へと戻っていった。 なぜあいつのタオルがから渡されるのか、その辺は無粋な質問でしかないからあえて尋ねなかったが、相変わらず岳人や俺をたてることばかり上手くなるに対して俺が思うことは大きくなるし、強くなる。 (「努力」は、もうええやろ。今はもっと素直に喜べばええのに) 相変わらずその疑問は、本人に尋ねることはできない。俺はどこかすっきりしない心のまま俺は部室へと向かい、着替え、タオル片手にコートに出て岳人を探す。 先に到着していた岳人は、コートの上に座り込んでガットの調子をうかがっていた。俺は背後から声をかける。 「岳人」 「ん? ああ、侑士。あれ、それ俺の?」 「から。なんやねんお前ら、公認になった思たらいきなりいちゃつきよって」 「ばっ! バカヤロ! いちゃついてなんかねえよ!」 「そこで怒るんがいちゃついとる証拠やっちゅーねん」 髪の色に真っ向勝負な赤らみ具合で岳人は怒る。怒るという行為自体、後ろめたいというかやましいことがあるからこそであって、その行為自体が自分の言葉よりも何倍もの説得力をもってしまっていることに、いつになったらこの男は気づくのか。ただ。 「……加減が分かんねえなあ、あー難しい」 俺に聞こえることを計算できないくせに、いやできないからこそこう呟いた岳人の本音に嘘はない。 受け取ったタオルをじっと見つめた後、岳人は雑に頭をかいてつま先をコートの上に数回落とす。その行動や、さきほどの言葉。岳人と短くも濃い親友関係をもっている俺からすれば、それは照れ隠しの中でも極度の嬉しさからくる部類のものであること、そんなことはすぐに見抜ける。 ただ、それを見るたび、やっぱり俺の心にはあの疑問が浮かんでくるわけで。 「岳人、とはどんなんや」 「どうって……なにが」 「お前が男として立派にならなあかんで」 「なんだそれ」 「せめて身長だけでも高うなれ、お前が頼りなかったらあいつは……」 「心配してるのかけなしてるのかどっちだ、お前は」 伝えようにも、聞こうにも、うまくできない俺の言葉に岳人はただ素直なしかめ面。 なんで素直に褒めさせてくれんのや、なんで心からふたりセットで幸せを祝わせてくれんのや、と。そんなことはこのど正直な男にぶつけるにはあまりに意味深な言葉すぎて、今日も今日とて俺は二の足を踏む。 そんな俺の様子は、他の部員たちには筒抜けだった。 「向日のやつ、結局ってやつと付き合ってるのか?」 「見たら分かるやろ」 「はー、なるほどねえ。まあでもあの激ダサなテニスを続けられるよりはマシか」 他人事には(跡部と鳳を除く)(と言うと本人が激怒するのでテニス部員とする)まったくもって興味ない宍戸すら、そう呟き。 「でも俺はずっとあの人が彼女だと思ってましたから」 「なに勝ち誇った顔しとんねん、鳳」 「ある意味勝者です、俺は」 「誰にやねん」 いつのまにやら関係者扱いになっていた(念のため言っておくが、恋愛に関して非常に頼りないこの男に岳人が相談したことは一度もない)(岳人も頼りないが)(要するに俺からすれば誰も以下省略)鳳はひとりで勝手にご満悦。 「なに言ってんだよ、忍足。あのふたりは1年の時からずっと付き合ってたんだよ」 眠気に襲われているジローの勘違いは幸せなものとして無視するとして。 「無意味な質問に答える義務は俺にはありません」 可愛くない後輩も無視するとして。 「ウス」 通訳のいない後輩の言葉は、そのとおりですよ忍足さん! として理解するとして、も。 「は? 誰だそれ」 我らの誇るべきテニス部部長跡部景吾にいたっては、眉間に見事な皺を作ってあっさりとそう言い放った。 テニスコートの上を、跡部の機嫌を宥めるかのような心地よい風が流れていく。すべてが跡部に都合のよいこの環境の中、俺は小さくため息をつく。 確かに、言われてみればはなにも目立つ部活でも目立つ委員会でも目立つ外見でも性格でもないわけで、テニス部内はおろか学校単位で広い目というものを持たなければならない跡部からしたら、それは強引に「覚える」という意識を働かせなければならない相手なのかもしれない。 芦屋の知り合いや、と跡部が知っているであろう女子の名前を引き合いに出したが、また笑えるぐらい素直に眉間に皺を寄せて悩んだ後、「知らねえ」と呟いて会話は終わった。 部長は、配下の個人情報については興味がないらしい。 「岳人の誕生日」 「知らねえ」 「好きな食べ物」 「知らねえっつってんだろ」 「樺地の好きな色」 「赤、青、緑」 訂正。部長は、向日岳人という人間については興味がないらしい。 あまりにあまり、なんで俺はテニスコートを見つめながらしみじみと呟く。 「もう少し、岳人に優しくしてやってもええと思うんやけどなあ。スランプの時とか」 「優しくすればまともなテニスに戻るのか? その度優しくされることをあいつに期待させるのか? そんな世話、一番くだらねえ」 ごもっともと頷いた時には、忙しい御身の我らが部長の姿は既に俺の視界の中にはなかった。 まあ、跡部の言葉が嘘だったことはいまだかつてないわけで、それは誰でもない俺が一番知っていることで、だからこそ後輩に指示を出す、そんな跡部の背中を俺は見送ることぐらいしかできないわけで。 「その女子のおかげで、まともに戻ったんやけどなあ……」 「その女子のせいで、まともじゃない時期ができたんだろ」 「正解」 「嬉しくねえ」 いつのまにやら話を聞いていた宍戸の言葉に冷静に答えながらも、俺はふと思い出す。 その言葉こそが真実な、過去の出来事。それを俺は否定する気はない。宍戸もない。恐らく跡部も(本当にもしかしたら)否定することの愚かしさゆえにあのように言ったのかもしれない。その可能性はいくらでもある。 それほど、岳人との関係は一言では語れるものではない。 それほど、岳人も簡単な関係だとは思っていない。でもそれを乗り越えたからこそ、今は笑ってもよいと思うことも間違いではないはず。今素直に照れる笑う怒る、そんな岳人を俺は褒めたいと思う。 そしてそう思うことは、に対してもあっていいはずなのだ。その過去は、岳人がひとりで乗り越えたわけでも、自分ひとりのためだけに乗り越えたわけでもないのだから。 改めてそう思い、俺はただ静かにコートの上に立つ岳人を見つめる。 一時は見てもいられないほど痛々しいテニスしかできなかったが、今は随分と落ち着きを取り戻している。素直に笑うことも、素直に怒ることもできるようになった。跡部がしかめ面をすることもなくなった。 (のため、っちゅーのは言いすぎかもしれんが) それでも、との関係が今の状況になったから現実としてのこの目の前の光景がある。そのことは、ふたりを客観視できる俺が思う以上岳人に否定する権利はない。 思えば思うほど、自分の理論の正当性に俺は沈鬱な気分になるのを防げない。ため息も自然と多くなる。どうしてくれよう、この暗澹たる気分を 俺はひとりの姿をコートの外に見つけ、唖然とした。 「近くで応援せえへんの?」 「わっ、忍足くん」 岳人に見つからないようにたどり着いたその場所で、は心底驚いたように、けれど小声で肩を震わせた。 どうやら練習の姿を見にきたらしい。ご丁寧に岳人の死角、しかも他のテニス部員たちにも気づかれにくいコート外(そもそも氷帝のテニスコートには観客席があるから、大概の観客はそこに座るし、俺たち部員もそこにいることが当たり前だと思っている)には佇んでいた。相変わらずなにかを優先させたようなその態度に、俺はいい加減苛立ちにも似たものを覚え、ため息混じりに会話を繋げる。 「別に今更、隠れてするもんでもないやろ」 「うーん、そういうのじゃないんだけどなあ……そう見えても仕方ないか」 「他人の目を気にする時期はもう過ぎたと思うで? いい加減……」 「違うよ、そうじゃなくて」 困ったように笑いながら、けれどは。 そっと目を細めて岳人を見つめたあと、小さく、そっと呟いた。 「岳人がテニスに集中するためには、私はいくらでも努力をして当然だと思うのね。『あの』せいで無茶なテニスをさせちゃったから。だから、私の我がままを通す場所でも、私の気持ちを伝える場所じゃないの。ここはね」 コートを真っ直ぐに見つめながら呟くに、俺もつられて視線を向ける。 一時はどん底まで沈んだモチベーションが戻り始めている。いつもの岳人に戻り始めている、むしろ平素を通り越すための壁をひとつ越えようとしている。そんな予感すら感じさせる、余裕のあるテニス。 けれどそんなことは、言われずとも知っている。には悪いが、岳人のテニスを一番傍で見ているのは他の誰でもない俺だ。 だが。だが俺には、その変化に関わりを持っているの、まるで「自己犠牲」にしか見えなかったはずのの表情が、平素のものより柔らかく、そして。 嬉しさを隠し切れないでいる事実を否定する、そんな権利は俺にはない。 「つくしすぎやと思うで、そんな甘やかしたらあとが大変になるんとちゃうか」 「今はいいよ、それで。私がそうしたいんだから」 「それで幸せか」 「十分」 俺はしばらく口を閉ざしてその様を見つめていたが、やがて苦笑にその役を譲る。 を否定することは岳人を否定することにも繋がる。その事実に気づかされてしまえば、もう俺にはなにも言うことがない。 「やっぱり、お前は岳人の彼女にはもったいないなあ」 やがてからかい気味に笑ってそう言えば。 軽く流されるだろう、そう思って呟けば。 「岳人がもったいない、なんだけどな。幸せだよ、今。私」 俺の本音を一体どこまで理解しているのか、思わず問いかけたくなるようなその返答。 わずかに小首を傾げながら当然のごとくそう言い放ったに、俺はもう一度、苦笑という降参の旗を振る。 「岳人の命令も好き好んで聞いてやるんか」 「命令を聞く……っていうか。うん、でもそうなるのかな? よく分からないけど」 「なに嬉しそうに言うてんねん」 「だって亭主関白なんだよ、結構」 「一生かかっても似合わへん……」 「あ、ちょっと。遠い目をしないでください、人の彼氏のことを」 「彼氏?」 なにがをそうさせるのだろう。そう思うことは、とても愚かなこと。 素直にその言葉を用いたに対して、その本音を探る問いかけを用意しようなどと思うことは、とても情けないこと。 鼓膜を優しく揺らしたその響きに、俺はしばらく沈黙を守ったがやがて苦笑まじりに呟く。 「彼氏か、お前の」 「……彼氏、だよ。大切な」 どこまで同じか。確かめるかのようなその一瞬の沈黙、そして。 「ありがとう、忍足くん」 笑ってそう言うに、俺は軽く左手を上げてそのままテニスコートへと戻る。 どこかで聞いたことがあるようなその台詞に口元が緩む。どこで聞いたかなど、もう思い出すことも滑稽だ。都合よく視界の中に入ってこようとする岳人の姿に、ついには笑いが漏れるのを俺は止めることができないほどに。 けれど、その岳人こそがにあの言葉を言わせ、あの表情をさせていることだけは、誰にも否定することができない事実。 それこそ、岳人が否定することなど許さない事実。俺に否定する権利などない事実。 「すまんなあ、岳人」 「は? なにが」 「俺が甘かった。お前は小さくとも男や、男。しっかり働き」 「だからなにが。ていうかさりげに俺をけなすな、聞き逃すとでも思ってんのか」 それならば、と。相変わらずのしかめ面で俺を見上げる岳人の頭を一度撫でてから(当然、怒られること覚悟)、俺は心の中に宿るひとつの気持ちに素直に頷きたくなる。 それならば、必死に努力して今の結果、との関係を作り上げたこの親友を、これからも支え、助けられる人間でいようと。 お節介ながら勝手にそう心に誓えば、岳人は不機嫌をむき出しにしたまま俺の手元を離れる。 度が過ぎたか、と自分の左手を見つめたその時、言葉の代わりに飛んできたテニスボールは綺麗な弧を描いて俺の左手のひらに収まった。 |
| 07/04/10 |